十川菜穂先生より関東予選Ⅰ参加者の皆様へ
2020年11月7日音降りそそぐ武蔵ホールにて開催されました関東予選Ⅰの参加者の皆様へ当日の審査員十川菜穂先生よりコメントを頂いております。
【参加者の皆様へ】
世界中の音楽シーンが停滞している今、参加者皆様の生きた音楽を聴けた先日のコンクールは、私にとっても本当に貴重な時でした。演奏者の鍵盤操作で発せられた音がピアノの中で共鳴しホールに響き渡って耳に届くという当たり前の営みを、これほど有難く思ったことはありません。音楽は、時間芸術といわれる通り、演奏されてこそその真価を発揮するもので、作曲家、演奏者、聴き手の三者による、時空を超えたコミュニケーションともいえるのではないでしょうか。
コンクールに向けて皆様が丹精込めて準備されてきた演奏ですが、説得力を高めるのは、曲への深い音楽的理解と共感だと思います。それを究めることで、求められる音色や響き、音楽の方向性を知ることができ、それが演奏の指針となるでしょう。そして、それを実現するための技術を磨き、常に自分の音を聴きながら目指すものに近付けていってください。
これからも名作曲家の遺産であるピアノの膨大なレパートリーに挑戦し、さらに人生を豊かに彩っていってくださるよう願っております。
十川菜穂