安達朋博先生より関東予選Ⅰ参加者の皆様へ
2020年11月7日音降りそそぐ武蔵ホールにて開催されました関東予選Ⅰの参加者の皆様へ当日の審査員安達朋博先生よりコメントを頂いております。
【参加者の皆様へ】
ブルーメンシュタイン・ピアノコンクールの関東予選Ⅰへご出場の皆様、お疲れさまでした。素晴らしい演奏も多く、レベルの高い予選会となりましたこと、日頃の皆様の努力の賜物だと感激致しました。
さて、気づいた点をいくつかお話させて頂きます。やはり緊張に飲まれてしまう方が少なからずいらっしゃったかと思います。特に暗譜で演奏なさった出場者に多かったと思いますが、どうしてもテンポが速くなってしまう。速くなることがいけないのではなく、余裕がなくなってしまい暴走してしまう演奏が見受けられました。<いつも通りに>と思っていても、緊張をすると心拍数が上がりますので、自然と体感テンポも上がってしまいます。ですから、<いつもより落ち着いたテンポで弾こう>というくらいで丁度良いこともあります。また、「聞き覚え」的なテンポで弾いてしまっている方は特にそうですが、理想のテンポが強くありすぎて、まだその段階にいっていないのに、その思い描くテンポで弾こうとして結果的にうまくいかなかった演奏もあったように感じます。
思いの強さゆえとは言え、そのような中で、ご自身の出される音に十分に耳を傾けられず、音色が美しいかどうかだけではなく、ペダルの問題、左右のバランスの問題など、改善点はまだまだ多様にあります。どなたも、お好きな曲、思い入れのある曲を選ばれ、作品に対しての想いや表情にポジティブな面が多々あるからこそ、惜しい点です。
主旋律や副旋律などの各声部について、または伴奏にあたる部分など、構造そのものは把握し表情をつけて豊かに奏でようとしている様子も分かるのですが、ご自分の中だけでしか聞こえていない。つまり、ここはこうなんだ、ああなんだ、と頭で分かっているだけで、それが物理的に音として達成できていない演奏も多かったように思います。肩の力を抜いて、もう少し体を起こし、その空間に響いているご自身の音に耳を傾けて確認してみて下さい。タッチに気を配ることも大事です。 どうかこれからも、お好きな曲、お得意な曲に磨きをかけて頑張って下さい。また皆様の演奏をお聞かせ頂ける日を楽しみに致しております。
安達朋博